矯正歯科コラム

2020.02.14

一期治療を行う症例② 開咬

上下の歯の咬み合わせが垂直的に開いていると前歯でものをうまく咬みちぎることができなくなります。また、サ行などの発音がしにくいと心配されて来院される方も多くいらっしゃいます。
このような咬み合わせでは、嚥下まで含めた口腔機能全体に支障が出やすいので、子どもの時期に改善することが望ましい不正咬合です。
指しゃぶりや、舌を前に突出させるような不良習癖によって開咬になることが多く、矯正装置を使った物理的・機械力によるアプローチだけでなく、習癖除去などのトレーニング・機能面からのアプローチが必要なケースがあります。

上下の顎の距離が垂直的に離れていたり、習癖のコントロールが十分にできないこともあるため、治療後の予後が不安定になりやすく、また、歯と顎の大きさのずれなど、他の原因による不正咬合を併発して二期治療が必要となるケースが多いです。そのため、長期的な成長変化の見極めなど、適切な診断を行ってから治療を行うことが望ましいと思われます。

2020.02.14

一期治療を行う症例① 下顎前突(反対咬合)

上下の前歯の咬み合わせが前後的に逆のため、見た目も悪く、お子さんの状態を心配されている親御さんも多いのではないでしょうか。
症例にもよりますが、永久歯の前歯が上下4本生えそろう頃が治療開始に適した時期です。
治療の予後(経過)は、上下の顎の位置関係に問題があるかどうかによるところが多いです。

顎の位置関係に問題がなく、単に歯が生える向き(傾き)だけが問題の場合は、一期治療だけで治療が完結できる可能性が高くなります。治療後はそのまま永久歯列が出来上がるまで経過観察します。再度反対咬合にならなくても、デコボコなど、ほかに治療すべき問題があれば二期治療を行います。

骨格的な問題がある場合は、一期治療で咬み合わせを改善しても、その後の成長過程で反対咬合が再発しやすくなります。この場合は再度二期治療で反対咬合に対する治療が必要です。
再発するなら一期治療は不要ではと思われるかもしれませんが、子どもの時期に一旦咬み合わせを改善することで、咬み合わせの悪さから生じる歯への負担や上顎の成長阻害をできる限り減らすという効果が期待できます。

乳歯列の反対咬合は、骨格的な問題がなければ前歯の生え変わりで自然となおることがあります。骨格的な問題がある場合でも少し待てば一期治療ができる時期になりますから、無理にあわてて治療を行う必要はないと考えております。
ただし、審美的な理由など、早期に治療を必要とするケースもありますので、咬み合わせが気になった時点で相談にお見えになるのが良いと思います。

2020.01.30

一期治療と二期治療

お子さまの矯正治療をいつ開始したら良いかお悩みの方も多いのではないかと思います。
子どもの時期の矯正治療は、開始の時期によって通常2つに区分されます。

一期治療:混合歯列期(永久歯が生えそろう前)の治療、だいたい6歳以降
二期治療:永久歯列になってからの治療、だいたい12歳以降

そして、考えられる治療のパターンは以下の通りです。
① 一期治療を行った結果、二期治療の必要性がなくなる
② 一期治療を行い、その後二期治療も必要となる
③ 一期治療の有用性がなく、二期治療のみを行う

①のケースが、一期治療を行う場合に最も有用性が高いものです。
②は、一期治療を行うと、二期治療が有利に進められたり、二期治療開始まで放置できない問題があるなど、将来性を見越して有用な場合に行われます。
③の場合、例えば適切な診断を経ずに、とりあえずデコボコの歯列を整えたり、拡大などをしたりしたものの、永久歯列で結果的にデコボコになり、永久歯列になってまた同じような治療が必要になったというようなケースでは、一期治療の有用性は乏しいということです。

一期治療は、装置が比較的簡便で反も早く、しかも短期間かつ安価で済ませられることから、親御さんがお子様を心配される心理に同調するようにむやみに早期治療を推奨する風潮もあるようです。しかし、この時期の治療は、永久歯列と違い対象となる歯列がまだ全部見えておらず、今後の生えかわりや、顎骨の成長などの変化を見通した上で行わないといけないためかえって難しく、きちんとした診断や見通しを立てた上で行わないと、「結果の伴わない余計な治療」で患者さんの負担だけが増える結果になってしまいます。

具体的にどのようなケースで一期治療を行うべきか、次回より具体的な症例を使って解説したいと思います。

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